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ベトナム・ホーチミンの卓球事情:活気あるクラブシーンを体験
東南アジアを巡りながら各国の卓球事情を体験するシリーズ、今回はベトナム最大の都市ホーチミンシティ編です。 バイクの洪水、活気ある路地裏、そして予想以上に熱い卓球文化。 現地のクラブを訪ね、ベトナムのプレーヤーたちと実際に打ち合った体験をお伝えします。
ホーチミンシティに到着して
タンソンニャット国際空港を出た瞬間、むわっとした熱気が全身を包みました。 気温は35度近く、湿度も高い。空港の外にはバイクの大群が待ち構えていて、 その迫力にまず圧倒されます。タクシーで市内へ向かう道中、窓の外には数え切れないバイクが 信号を無視して交差点を流れるように通過していく光景が広がっていました。
宿泊先はバックパッカー街として知られるブイビエン通り近くのホテル。 荷物を置いて通りに出ると、フォーやバインミーの屋台、フルーツジュースの店が 所狭しと並んでいます。この街のエネルギーは、東南アジアの他の都市とはまた違った独特のものがありました。 まだ到着初日でしたが、「この街なら面白い卓球体験ができるかもしれない」と直感しました。
卓球クラブを探す:Facebookと口コミが頼り
ホーチミンでの卓球クラブ探しは、まずFacebookから始めました。 ベトナムではFacebookの利用率が非常に高く、卓球関連のグループも多数存在します。 「bong ban Ho Chi Minh」(bong banはベトナム語で卓球の意味)で検索すると、 いくつものコミュニティグループがヒットしました。
グループに参加して「日本から来た卓球愛好家です。一緒に練習できる場所を探しています」 とベトナム語に翻訳して投稿したところ、数時間で10件以上の返信がありました。 ベトナムのプレーヤーたちの反応の速さと歓迎ぶりには驚きました。
- Facebookグループで「bong ban」+地名で検索
- 宿泊先のスタッフに「卓球ができる場所」を聞く
- Googleマップで「table tennis」「bong ban」で周辺検索
- 公園を散歩して屋外テーブルを探す
また、宿泊先のホテルのフロントスタッフに聞いてみたところ、 「近くの公園に卓球台があるよ」と教えてくれました。 さらに、Grabバイク(配車サービス)のドライバーにも聞くと、 自分も卓球をやっているという人がいて、行きつけのクラブを紹介してくれたのです。 ベトナムでは卓球が想像以上に身近なスポーツだということを、この時点で実感しました。
ベトナムの卓球文化:公園から路地裏まで
ホーチミンの卓球文化で最も印象的だったのは、その「どこにでもある」感覚です。 早朝のタオダン公園を散歩すると、コンクリート製の卓球台が数台設置されていて、 朝6時台からすでに年配の方々がラリーを楽しんでいました。 ラケットはペンホルダーが多く、軽快なフットワークでテンポよく打ち合っています。
公園だけではありません。住宅街の路地裏を歩いていると、 建物の間のわずかなスペースに折りたたみ式の卓球台を出して打っている若者グループに出くわしました。 カフェの奥に卓球台が1台置いてある店も見かけました。 ベトナムの人々にとって卓球は、特別な設備がなくてもどこでも楽しめる 日常の娯楽なのだと感じました。
路地裏で卓球をしていた若者に声をかけたら、すぐにラケットを貸してくれて一緒に打つことになりました。言葉は通じなくても、ラケットを差し出すジェスチャーひとつで会話が始まる。卓球の素晴らしさを改めて感じた瞬間でした。
地元クラブを訪問:熱気あふれる練習場
Facebookで紹介してもらったクラブのひとつを訪問しました。 場所は1区から少し離れたビンタン区の住宅街の中。 看板は小さく、通りからは見つけにくい場所にありますが、 階段を上って2階に入ると、そこには6台の卓球台が並ぶ本格的な練習場が広がっていました。
夕方の18時頃に到着しましたが、すでにほぼ全台が埋まっていて、 順番待ちをしているプレーヤーもいます。 年齢層は幅広く、10代の学生から60代と思われるベテランまで。 床はやや滑りやすいコンクリートでしたが、照明は十分で、 壁にはベトナム代表選手のポスターが貼られていました。
クラブのオーナーに自己紹介すると、笑顔で迎えてくれて、 すぐに他のメンバーに紹介してくれました。 「日本から卓球しに来たの?すごいね!」という反応で、 一気に場の空気が和みました。
クラブの設備
- 卓球台:6台(うち2台は比較的新しいDoublefish製)
- 床:コンクリート(一部にマットを敷いている台あり)
- 照明:LED照明で十分な明るさ
- 空調:扇風機のみ(エアコンはなし)
- 練習球:クラブの球を自由に使用可能
- 給水:ウォーターサーバーあり、お茶も無料
ベトナムのプレーヤーたちと打ち合う
最初に対戦したのは、30代のフンさんという男性プレーヤー。 中国式ペンホルダーの裏面打法を使いこなす技巧派で、 台の近くでのカウンターが非常に速い。 こちらがドライブで攻めても、コンパクトなスイングで的確にブロックしてきます。 1セット目は7-11で負け、2セット目も接戦の末に落としました。
次に打ったのは、50代のタインさん。日本式ペンホルダーで、 フォアハンドのスマッシュが強烈。バック側はショートで粘り、 チャンスボールが来ると一気にフォアで叩き込んでくるスタイルです。 スピードよりもコース取りが巧みで、何度もノータッチで抜かれました。
試合後、フンさんが片言の英語で「あなたのバックハンドはとてもきれい」と 褒めてくれました。私も「あなたのカウンターは素晴らしい」と伝えると、 嬉しそうに笑って、裏面打法のコツを実演で教えてくれました。 言葉の壁はあっても、ラケットを通じたコミュニケーションには何の障壁もありません。
- とにかくフレンドリーで、外国人を歓迎してくれる
- 技術的な話は実演で伝え合えるので言語の壁は小さい
- 対戦後に握手して感想を交わす文化がある
- スマートフォンの翻訳アプリが会話の強い味方になる
日本とベトナムの卓球スタイル比較
今回の訪問を通じて、日本とベトナムのプレースタイルや用具の違いをいくつか感じました。
グリップと戦型
日本ではシェークハンドが主流ですが、ベトナムではペンホルダーの使用者がまだまだ多い印象です。 特に40代以上のプレーヤーはほぼペンホルダー。 若い世代ではシェークハンドも増えてきていますが、 中国式ペンの裏面打法を使うプレーヤーも目立ちました。
用具の傾向
ラバーは中国製の粘着性ラバーを使っている人が多く、 日本やドイツのテンション系ラバーはあまり見かけませんでした。 ラケットも中国メーカーのものが中心で、価格帯は日本よりかなり手頃です。 ただし、競技志向の若いプレーヤーの中には、バタフライやニッタクの用具を 使っている人もいました。
プレースタイルの違い
- ベトナム:台に近い位置での速いラリー、カウンター重視、コンパクトなスイング
- 日本:中陣からのドライブ攻撃、回転量の多いサーブ、組み立てを重視
ベトナムのプレーヤーはピッチの速さで勝負する傾向があり、 日本人プレーヤーが得意とする回転の変化で崩す戦術が意外と効果的でした。 一方で、台上の処理やカウンターの精度ではベトナムの選手に分があると感じました。
実用情報:費用・時間・持ち物
クラブの利用料金
- 1回の利用料:30,000〜50,000 VND(約180〜300円)
- 月額会員:300,000〜500,000 VND(約1,800〜3,000円)
- ラケットレンタル:無料〜20,000 VND(約120円)程度
- 練習球:ほとんどのクラブで無料提供
日本の体育館利用料(1回500〜1,000円程度)と比較すると、かなりリーズナブルです。 月額会員になれば毎日通っても3,000円以下なので、 長期滞在者にとっては非常にありがたい価格設定です。
営業時間
多くのクラブは朝6時〜夜22時頃まで営業しています。 早朝は年配のプレーヤーが多く、夕方から夜にかけては仕事終わりの社会人や学生で賑わいます。 週末は終日混雑することが多いので、平日の午前中が比較的空いていて狙い目です。
持ち物チェックリスト
- ラケット:自分のラケットがあれば持参推奨(レンタルは質が低いことが多い)
- シューズ:室内用の運動靴(サンダルでプレーしている人もいますが非推奨)
- タオル:必須。エアコンがないクラブが多く、大量に汗をかきます
- 水分:2リットル以上を推奨。現地で購入も可能
- 着替え:練習後の着替えは必須。汗で服が絞れるレベルになります
- 現金:少額のベトナムドン。カード不可のクラブがほとんど
練習後の楽しみ:ベトナム料理と卓球仲間
ベトナムの卓球クラブで素晴らしいのは、練習後の交流が自然に生まれることです。 この日も練習が終わると、フンさんとタインさんが「一緒にご飯を食べよう」と誘ってくれました。
クラブの近くにある路上の食堂に案内されて、フォー・ボー(牛肉のフォー)を注文。 1杯40,000 VND(約240円)で、たっぷりのハーブと一緒にいただきます。 練習後の疲れた体に温かいスープが染みわたり、ライムを絞って香菜を加えると さらに食欲が増します。
食後はベトナムコーヒーを飲みながら、スマートフォンの翻訳アプリを使って 卓球談義に花が咲きました。 フンさんは日本の卓球選手をよく知っていて、特に日本の速攻型の選手について 詳しく話してくれました。 タインさんは「日本製のラケットが欲しいけど、ベトナムでは手に入りにくい」と話していて、 日本の卓球用具への関心の高さを感じました。
練習後に一緒に食事をして、翻訳アプリ越しに卓球の話で盛り上がる。国も言葉も違うのに、卓球という共通の趣味があるだけで、こんなにも距離が縮まるのかと驚きました。
ホーチミンで練習スポットを見つけるコツ
最後に、ホーチミンシティで卓球の練習場所を見つけるための実践的なアドバイスをまとめます。
- Facebookグループに参加する: 「CLB bong ban」(卓球クラブ)で検索し、複数のグループに参加。 投稿して反応を待つのが最も確実な方法です。
- 公園の朝練を狙う: タオダン公園、9月23日公園、レバンタム公園などの大きな公園には 屋外卓球台が設置されていることが多い。早朝5時半〜7時頃がピークです。
- Googleマップを活用する: 「CLB bong ban」「phong tap bong ban」(卓球練習場)で検索すると 口コミ付きで複数のクラブが見つかります。
- 現地の人に聞く: ホテルスタッフ、Grabドライバー、カフェの店員など、 気軽に「卓球できる場所を知っていますか?」と聞いてみましょう。 意外と卓球経験者が多く、具体的な場所を教えてくれます。
- 体育施設を探す: 区ごとに公共のスポーツセンター(Nha thi dau)があり、 卓球台を備えている施設も少なくありません。利用料は非常に安価です。
- 卓球 = bong ban(ボンバン)
- 卓球クラブ = CLB bong ban(セーエルベー ボンバン)
- 一緒にやりませんか = Choi cung duoc khong?(チョイ クン ドゥオック コン?)
- 上手ですね = Danh gioi qua!(ダイン ヨーイ クア!)
- ありがとう = Cam on(カムオン)
まとめ
ベトナム・ホーチミンシティの卓球シーンは、想像以上に活気に満ちていました。 公園の屋外テーブルから本格的なクラブまで、卓球を楽しむ環境が街のあちこちに存在し、 プレーヤーたちは外国人を温かく迎え入れてくれます。
費用面でも日本と比べて非常にリーズナブルで、 長期滞在でも短期旅行でも気軽に卓球を楽しむことができます。 言葉の壁はありますが、ラケットを持っていればすぐに友達になれる。 それがベトナム卓球の最大の魅力だと感じました。
ホーチミンを訪れる機会があれば、ぜひラケットをスーツケースに忍ばせてみてください。 きっと忘れられない卓球体験が待っています。